2019年3月12日、明星学苑・明星小学校にて、5年生「正多角形の性質」の学習でプログラミングを使った授業を行いました。
今年度、明星学苑・明星小学校とベネッセコーポレーションは、算数の授業にプログラミング教育を導入すれば、児童がわかりにくい概念をより理解しやすくできるのではないかという目的のもと、共同研究を進めています。本単元は、新学習指導要領でもプログラミングを導入するのに適した学習として紹介されています。今回は、既習の正多角形の内角の大きさを計算してから、スクラッチで正多角形を作図する活動をしました。

分度器で角の大きさをはかる作図方法

指導案サイト「プロアンズ」の「図形の角の大きさを使った作図」にある指導案とスクラッチ教材を使って、正多角形の性質の習熟の授業として実施しました。
授業者の平井哲先生は、正多角形の作図をするときに、外角を測るのではなく、内角を測って作図した方が、児童は理解しやすいという考えから、このスクラッチ教材を授業で使いました。ブログ記事の解説にある通り、このスクラッチ教材では、進む方向Aを逆向きにして右回転する方法で作図しています。この動作は、児童が分度器で角度を測るときの作図方法と同じなので、自然な動きです。

 

  1. ・1番目の辺をひく
  2. ・分度器で角度をはかる
  3. ・2番目の辺をひく
  4. ・分度器で角度をはかる
  5. ・3番目の辺をひく

正多角形の内角の大きさを求める

授業のねらいは、「内角の大きさを計算で求めて、プログラミングを使って正多角形を作図しよう」です。

まず、正三角形の1つの内角の大きさの求め方を確認します。先生と児童のやりとりは次の通りです。先生がうまく児童の思考過程を引き出しています。

先生:正三角形の内角の和は?

児童:180度

先生:正三角形の1つ分の角の大きさは?

児童:60度

先生:どうやって求めたの?

児童:180÷3

先生:3はどういう意味?

児童:三角形の3

次に、正六角形の内角の大きさの求め方も確認します。内角の和ではなく、正六角形の1つの内角の大きさは120度と児童が先に答えました。暗記しているのでしょうか?先生は、どうやって求めたのかを確認します。

正六角形は対角線で、4つの三角形に分かれるので、内角の和は、
180×(6-2)=720度
正六角形の角は全部で6つあるので、1つの角の大きさは、
720÷6=120度
で求められます。

プログラミングで正多角形を作図する

正多角形の内角の大きさの求め方を復習した後、スクラッチ教材で正多角形を描画する活動に移りました。
まず、正多角形の作図です。スクラッチ教材の問題5で、イカのスプライトを選びます。

児童は、スクラッチに作図してもらうための命令を考えます。男子がホワイトボードに投影されたスクラッチ画面の上に動きを書きながら、命令を示しました。

児童:まず、土台をかくので、点をうつ、辺をかく、アの角を60度回転させて動かす。次に、あと2回、「辺をかく、アの角を60度回転させて動かす」を繰り返します。

先生:繰り返しのときには、オレンジのグロックを使えばいいね。

まず土台をかいてから、残りの命令を繰り返すという思考は、通常、プリントに予め水平に辺が書かれていることが多いからではないか、と授業後に振り返りました。土台を書くという児童の自然な発想を生かして、(N-1)回繰り返す命令のままでも悪くはないのではないか、という意見も出ました。

もし時間があれば、繰り返しブロックの外にある土台を書く部分の命令「辺をかく、アの角度を60度回転させて動かす」に注目させることで、繰り返し回数を3回に修正することもできます。そうすれば、正N角形は、N回同じ命令を繰り返す、という一般化に帰着させることも可能です。

ここまでを一斉授業で確認した後、児童は、問題7のカメのスプライトを動かす問題に自由に取り組みました。カメの問題では、自分の描きたい正多角形を選ぶことができます。

正十二角形を描画したければ、12と入力します。机間巡視していると、1つの内角の大きさを180÷12と計算している児童も多く、思った通りの正十二角形が描画できないので、どこが違うのかを試行錯誤していました。5年生の3学期なので、習熟しておいてほしかった内容だったのですが、児童の理解不足が露呈されました。

効果検証

この教材の効果を見るために、この教材を導入したクラス(実験群28名)と従来どおりの授業をしたクラス(統制群27名)とに分けて、事前テストと事後テストを実施し、2つの群を比較しました。事前テストは「正多角形の内角の和を求めましょう」、事後テストは「正多角形の1つの内角を求めましょう」という問題で、それぞれ、正三、四、五、六、八角形について5題出題しました。

【資料1】は、事前テストと事後テストの差の検定を行った結果で、p値0.059でわずかに有意差は認められませんでした。事前事後の平均正答率は、実験群が55.7から57.1へ2ポイント増加、統制群は53.3から41.5へ12ポイント減少しました。

スクラッチ教材だと、例えば内角の大きさを間違えてプログラミングした場合には、間違えたまま描画されるので、間違いが視覚的に明らかで、間違っていた箇所のプログラミングを修正することが、そのまま自分の間違いの修正に直結するのがいい点です。また、手書きでは授業中にせいぜい2つぐらいしか作図できないのですが、スクラッチ教材では、命令さえ正しければ何個でも自分の好きな正多角形を作図することができ、取り組み問題数が圧倒的に多くなる点、知識の習熟に役立つのではないか、と指摘されました。

ある児童は、土台をかいて、78度回転させて動かす命令を14回繰り返すことで、「ポンデリング」を描画していました。本来、正十五角形の内角の大きさは78度の2倍の156度ですから、意図的に半分の角を入れてみたのではないか、と思われます。このように、数値を変えてシミュレーションすることも簡単です。

(図2)

もし、156度と入力すれば、(図2)のように、正十五角形が正しく描画されます。辺の数が多い場合、描く速さを速くできるのもこのスクラッチ教材の特徴です。

以上の現象から、教材の効果は多少見られたのではないか、という考察をしています。

この教材と指導案は、プロアンズでご参照いただけます。ぜひ、ご活用ください。お気づきの点やご感想など、問い合わせフォームからお知らせいただければ幸いです。改善のために参考にさせていただきたいと思います。