東京学芸大学附属国際中等教育学校のインフォマティクス(学校設定科目)の授業で、Google Earth Engine(以下、GEEと記載)を使った問題発見と解決のための数式モデルづくりの授業を実施しました。
本記事は、前編に続く後編の記事です。

  1. 前編:授業の流れと中間発表
  2. ・後編:中間発表に対するフィードバックをもとに改善した、最終プレゼン(本記事)

最終プレゼン

中間発表から1か月後、第9回目の授業で最終プレゼンが行われました。
中間発表に対する友達や先生からのフィードバックを反映させて、各チーム提案内容を改善し、最終プレゼンに臨みました。発表者は全員で協力して適切に説明すること、聴き手は次の4観点でフィードバックシートを記入するように指示されました。

  1. 1.課題設定・収集分析・・・人工衛星のデータなど有益なデータを活用して、必然性のある課題設定がされ、適切な方法で情報収集し、分析している。
  2. 2.改善・・・プロトタイプの評価を適確に分析して、確実に改善に反映されている。
  3. 3.総合実践力・・・チーム及び個人のタスク管理を適切に行い、プロジェクトを自律的に推進し、完成している。
  4. 4.表現・説明・・・企画の妥当性や実効性が説得力のある形で分かりやすく説明されている。技術についての必然性もわかりやすく説明できている。

各班のプレゼン内容は以下の表の通りです。中間発表からかなり改善されていることがわかります。

まず、班別の、目的と経緯、改善ポイント、数式モデルについての表です。

テーマ 目的と経緯 改善ポイント 数式モデル
1班 森林火災 山火事の規模を、わかりやすい数式モデルで作ろうと考えた 本の冊数を言われてもわからない
山火事と森林破壊の区別がわからない
東京ドーム何個分の面積の森林が消えた、と出す。
この速さで森林が燃えたら、これからどうなるのか。
消えた木で何件分の家が建設できるか?
2班 津波 東日本大震災で被害予測がされていなかったという課題があったので、南海トラフ地震のときに同じ過ちをくりかえさないように、防災マップを作りたいと思った。
静岡県下田市(南海トラフ地震で一番被害が大きいと予想される地域)を対象とした。
データを自分たちで作ればいい、というアドバイスがあったので、それを採用。
津波の高さと遡上高のデータに注目した。
震源地からの距離と津波の高さの近似値を求め、それらの関係を調べた。

津波の遡上高は、津波の高さの3倍になる。

3班 経済 土地が有効利用されていればGDPが高いのではないか、という仮説を立てた。 対象国をVISTAにしぼり、土地利用の仕方をGEEに落とし込むのは難しいので、数式モデルは夜間の光量を使うことにした。 夜間光量
面積あたりの光量
夜間光量とGDPの散布図(相関図)
4班 エネルギー アフリカの地域で太陽光パネルを設置するとき、どの地域に設置するのがいいか?
太陽光発電はクリーンなエネルギーであること、アフリカは電気がない地域が多いので、2つのことをくみあわせた。
地球の地軸を考慮していないのではないか?との指摘があった。
北緯と南緯で場合分けをした。
緯度、気温、人口
気温が低い方が太陽光発電効率が高い
人口が多ければいい、というわけではない。
まず最適な緯度を求める(緯度と気温で見る)
次に人口を求める
5班 天体観測 天体観測の場所は地方が多いのだが、もっと都心の身近なところにあるといいと思った。
調査対象は、適所7か所と本校
標高データが使われていない、との指摘を受けたので、使うことにした。
標高データ(地理院地図)は、調査対象地域は少なくとも高くない。(標高は無関係と考えた)
夜間の光量データは、本校がずばぬけて高い。=10以下という数式モデルにした
雲データは、マイナスで推奨レベルになる。=マイナス45を数式モデルとした。
肉眼で楽しむだけだったら、7等星とかにこだわる必要がない。これが、標高データが無関係だった理由なのではないか、と理由がわかった。

 

次に、プログラミング、結果と考察についての内容です。

テーマ プログラミング 結果と考察
1班 森林火災 Numbertreesという数式モデルを作成(式:消えた土地面積÷0.477)
メディア総合センターにある本は5000冊なので、それを単位とした。
森林の減少傾向はどの地域でもいえる。
GEEの範囲指定で、いろいろな地域が簡単にみられる。
GEEだけでは、グラフ描画までできなかった。
2班 津波 GEEの機能で、震源地に赤いピンを立てて、-0.168×aで
-48から8000まである。500km離れたら影響はゼロ、マックスは48m。影響する箇所の地図に色をつけた。その土地の標高も考慮した。
震源地を移動させて予測。
建物の倒壊度や浸水についてもやりたい。
数式の解釈をもっとやる。
3班 経済 ポリゴンを作って、グラフ表示した。

国ごとにやったら、大きな国だとエラーが出たので、国を分割して求めた。

夜間光量が一番低いのはベトナム。高いのはトルコ(2013年まで右上がりに増えた)。
面積あたりの光量を見ると、アルゼンチンが高い。
夜間光量とGDPの相関を見ると、ある程度の関係性がみられた。
GDPと光量の間には関係性があることが考えられる。
年次ごとの世界経済や内政の影響を考慮する必要がある。
4班 エネルギー アフリカ全体を4分割して、太陽光と雲の量を考慮。
人口9500人以上の場所をさがした。
アフリカの7地域に適所が見つかった
7か所の民家に太陽光パネルを設置することを提案する。
5班 天体観測 GEEの範囲を指定すると、コンソールでグラフ表示できる。データだけ見たい場合は、インスペクターを使えばいい。 雲データと夜間光量とを重ね合わせれば、適所を見つけることができた。
因果関係はわかっていない。

講評

1班の森林火災は、カリフォルニアで見つかった数式モデルをシンガポールなど他の国にも転用していました。実装までできていた点が評価されました。

 

 

 

2班の津波は、かなり広範囲に文献調査をした結果、震源地からの距離と津波の近似値の関係を調べて、数式モデル化していました。3学期の最初の頃は、昔の石碑から推測するという話もしていたのに、進化が見られ、完成度も高いと評価されました。
 

 

3班は経済と土地利用の関係を数式モデル化しようとしていましたが、中間発表でのアドバイスをふまえて、夜間光量との関係を見ることにしました。その結果、GDPと夜間光量はある程度関係があることが数値で確認されました。関係性が見つかったら、因果関係もあるかどうか追及することが課題研究のスタートにつながる、と激励されました。

4班は、アフリカの再生エネルギーの適所を見つけるための数式モデルづくりと、数式モデルによる地図への色分けなど、立地政策にも役立ちそうな完成度の高いアウトプットになりました。他の班からの評価も高かったです。送電距離という視点もきちんと考察されている点も評価されました。

5班は、都心の身近なところで天体観測できる場所を見つける数式モデルづくりに取り組みました。変数として、標高データ、夜間光量データ、雲データなどを調べて関係性を試行錯誤していましたが、標高データは無関係であることが発見されるなど、成果がありました。

 

授業の振り返り

本授業は、「社会や自然などの現実の問題を、目的に応じてモデル化して、シミュレーションし、作成したモデルをより良いものに改善することができる」という教科情報の学習目標に合わせた内容でした。

筆者は6年間、同校の授業支援をしてきましたが、今年度は生徒の実力と課題が適度にマッチして、特にアウトプットレベルの高い授業だったと思います。全9回という限られた授業数で、どの班も困難を克服しながら、強みを生かして、プロジェクト遂行できていました。Done is better than perfect(完璧でなくてもいいから完成させる)ということを、毎回、授業のはじめに伝えてきました。課題が壮大すぎて、小さな課題に分解できずに途中で終わってしまうことも多かったのですが、今年度はどの班もやり切れたのがよかったと思います。

後藤先生も、課題研究力が高く、仮説生成もできていた点、ゴールが見えない中、不安もあっただろうけれど、チームワークでうまく進めていた点、GEEも適切に使われて実装までいっていた点をほめていました。今後、社会に出てからも、協働で開発する仕方を学んでいってほしい、と結びました。

最後に、ある生徒の事後感想の一部を抜粋します。

3学期のGoogle Earth Engineは使ってみたところ、かなり高機能であるが、その分やり方を覚えるまではどのようにやればいいか全く分からず、何度もネットを検索した。これらを通してプログラムの書き方などの個人スキルの向上はネットを使えばいくらでも向上できる環境にいると感じた。だからこそ、これからはそれらの技能を使ってどのようなソリューションを生み出すのか、それとも解決していくのかを考えることや、意見を生み出すことも同時に重要であると感じた。だからこそ、この1年間は自分の技能、そして技能以外の問題解決能力や、統計的探究、アセスメントの方法や改善、協働とプロジェクトの評価の能力を高めることができ、良い1年となった。これらのスキルは将来会社に入ってチームプロジェクトを行う際は必ず必要となる技能のため、今年一年間の学習を社会人になった時に生かしたい。そして、個人技能はいつでも独学で高めることができるので、2019年は受験勉強があるが、大学に入ったらまた続けて自分の技能は常に高めていきたい。

お気づきの点やご感想など、問い合わせフォームからお知らせいただければ幸いです。改善のために参考にさせていただきたいと思います。